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[07.06/]
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の教師現る

体育館から教室に向かう生徒たちの足音がパタパタと廊下に鳴り響く。
「あの先生、なんだったんだろうねー?シュウはどう思う?」
「さぁね。新手のエリート教師なんじゃねぇの。」
「違うよ、アレは噂の落ちこぼれ教師だよ、たぶんね。皆が噂してた。」と、優斗が答えた。
「ふぅん、そうなんだー。面白そうだね。」となにやら楽しそうに笑うのは、持田ぐらいだろうが・・・。
「それより、この赤いカチューシャ可愛いね。イメチェン?」と持田の黒髪をサラッとなでる。それを恥かしがることもなく、
「さっすが、優斗!わかってるぅ。どこかのだれかさんと違って。」と激しく俺を睨みつける。
「う、うるせぇ!!」
「はーい、はやく教室に入りなさい。」と担任らしき女教師と、さっきのわけの分からない教師が何故か首根っこをつかまれて引きずられてきた。
 全員が席に着いたのを確認し、黒板に割りと読みやすい字大きく自分の名前を書いた。
「桜井春子です、今日から14組の担任をします。教科は英語、よろしくね。」さっきとは裏腹に爽やかな笑顔で言う。若く見えるけど、きっと30代はカタイだろうな・・・とぼんやりと窓の方を眺めて、ふと視線を黒板に戻すと、桜井春子のとなりにミミズが這った跡のような字で藤倉雅と書いてあり、その字を書いた本人は苦しそうにみぞおちを押さえている。何があったかは、俺にも想像に難くない。字はまさにミミズの這った跡なのだが、どこか芸術性を帯びている。
「ふ・・・ゲホッゴホッ・・・ふじくら、ウヴンッ・・・みやび・・・です、・・・副担任をします。」息絶え絶えに自己紹介をしている。雅とかいて「みやび」と読むらしいが、どんだけダメージを食らっているんだ。
「教科は、美術を教えます・・・美術は人に教わるものではないぞ。」いや、今、自分で教えるって言ってたけど。
「自分で感じ取るもんだ。ちなみに、桜井せんせーの歳は、さn・・・ゴフッ。」その、ちなみにはいらなかったらしい。
「さんじゅー・・・・・・・・・・・・・・・。」
言葉を発した3秒後、藤倉先生はご臨終なさった。
一方、桜井先生は、にこやかな顔で何もなかったかのように、その場を流す。
「じゃあ、一人ずつ自己紹介してもらおうかな。窓側の君から、名前と趣味と入ろうと思っている部活とか好きなこと喋ってちょうだい。」趣味・・・、無趣味というわけではないが、何を言えばいいんだ。だから自己紹介って嫌いだ。俺にはそんな特出すべきことなんてなにもないのに・・・。
「朝木優斗です。趣味は水泳と音楽を聴くこと。部活は水泳部と吹奏楽部で迷っています。よろしくおねがいします。」と眩しいばかりの微笑み。優斗は、誰にでも優しくて、いつもニコニコしてて、身長も高いし細身で、とにかくモテる。色素の薄いサラサラの髪は少し長めで、肌の色はほどよく白い。女がよく言うまさに、王子様ってトコロだ。しかし、この王子様ちょっと変わっていて、いつも俺らとつるんでいる。そんなことより・・・俺は何を言えばいいんだ。と何を言えばいいのか考えているうちにあっという間に、俺の3人前まで来ていた。
「持田千景って言います。趣味はぁ、人間観察で、部活はバスケ部に入ろうかなーって思ってます!友達募集ちゅー!」はちゃめちゃだな・・・。持田は、顔もスタイルも良い。だが、性格は最悪だ。俺を毎度毎度おちょくっているとしか思えない。端から見れば、黒髪の可愛い女の子だが、残念ながらそんなタマじゃない。何かと俺に突っかかってくる。そんなこと言っているうちに俺の番は来るわけで・・・
「よ、吉野修です。えっと、趣味は・・・特にないです。・・・部活は、まだ何部に入ろうか決めてません・・・。」なんて情けないんだ俺・・・。よろしくの一言も言えないなんて。
 
真上から少し傾いてきた日差しが、教室の中に差し込んでいた。終了のチャイムと同時に、私はシュウの元に駆け寄った。
「相変わらず、冴えないよねぇー。」
「余計なお世話なんだよ。お前なんか意味不明だったくせに。」と、毎回こんな悪態をついてしまうのは、もちろんシュウのことが好きだからであって、いっつもくっついているのに、このアホバカカスは、私の気持ちに微塵も気づいてくれない。全く本当に、しょうもない奴だ。
「いいから、一緒に帰ろうよ。」
「はいはい。」と、今日もそれに優斗がくっついて来るので3人で帰った。優斗は、あんなにモテるけどいつも私たちと一緒に居る。たぶん、私と同じようにシュウのことが好きなんだと、私は勝手に予測している。
 
「ったく、みぞおちはねぇよなぁ。みぞおちは。」と、初日早々に保健室のベットでのびているのは藤倉であり、保健医に文句を言うのであった。
「そう思わない?安藤せんせ。」
安藤先生と呼ばれるこの保険医は、どこからどう見ても、十人中十人が体育教師と答えるような、色黒で筋肉のついたいかにも丈夫そうな体の持ち主で、ヒゲ面のオッサン。強面だが、どこか優しい。
「あー、桜井チャンだろ?乙女に年齢の話は厳禁だよ、分かってないナァ。」とガハガハ声を立ててわらっている。(このオヤジ、よく40年間も保健の先生をやってきたな。)
「ホラホラ、そろそろ俺も帰るから、帰れ。明日から授業なんだろ?準備とかしなくていいのか。」
「あー・・・、まぁ、準備はいらないっちゃいらないですけどね。」とうっすら笑いを浮かべた。
この学校の美術室は、校舎の西側に位置しており夕日がさしていた。美術部なるものはないらしく、一人教室に佇んでいた。
「良い美術室だな。」古い教室ながらも、小奇麗にされており、道具も豊富に揃っている。よく片付けられていて、この上ない環境でいい作品が生まれそうだ。夕日に浮かぶ藤倉の顔はどこか穏やかであった。



続く。



追記(別名、著者の戯言):リアル性を追求しようとしましたが、やはり全てリアル的なのは無理ですね。登場人物にはそれぞれモチーフがちゃんと存在していたりいなかったり・・・当ててみてね!(笑
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