[07.04/]
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其の生徒つぶやく
「久しぶりの授業だな。だるっ。じゃあ、この間のデッサン返すぞー。」あれから2週間、特別時間割やなんやかんやで、月曜の美術はつぶれ続けていた。
「お前らの能力はよぉーーーーーくわかった。なんか、このクラスには宇宙人とかいるみたいだけど大丈夫か?あと、デッサンの裏に一応評価いれといたから。」そ、それは俺の描いた持田のことでは…!?もしや、と思いデッサン裏のページをめくった。青いボールペンで
『もう少し、相手のことをよくみること。』と書いてあった。ちゃんと見て描いたハズなんだけど。
「持田はなんて書いてあった?」
「お、おしえない!!!」珍しく顔を赤くし、焦っている様子だった。
「優斗は?」と差し出されたスケッチブックを受け取ると
『お前、本気か?』ななななななな何を描いた?!ページをもどると…お前か――――――!!!!まさに宇宙人らしき“者”の姿が。
「俺はちゃんと、描いたんだけどなぁ。」わざとらしい落胆の色をみせるが、そんなことで許されるレベルじゃない。後ろの子が知らないことが不幸中の幸いだ。
「そーいえば、なんでお前ら勉強しに来きてるの?」一瞬の沈黙の後、
「さーてやるか。今日は色彩でもやろーっかな。」え。なにそれ。1つ前はスルー?でも、俺なんで勉強してるんだろう。普通に勉強して、普通に学校でて、普通に就職して、普通に結婚して…でなんなんだろう。授業が終わっても、藤倉の言葉が気になりぐるぐるぐるぐるスパイラルに陥っていた。
「…持田と優斗はなんで勉強してるの?将来何になりたいの?」
「はあ?ばっかじゃないの?そんなの普通に学校とか社会に出るため、自分のためよ。」
「俺は別に義務教育だからだけど。」
「じゃあ、どんな大人になりたいんだよ?」
「普通に好きな人を養って、幸せにできればいいかな?」
「さすが、優斗カッコイイなぁ…。」
「…オトナ。嫌な響きね。」と急に冷めた言葉をつぶやかれ、その言葉の意味はなんだったんだろうと思った。持田の見つめる先は遠い遠いどこかだった。
『相手のことを想っているのがよく伝わってきます。』見透かされたようで、すごく恥ずかしかった。
「…本人に伝わらなきゃ意味ないのに。」と小声で呟いてみるが、肝心の本人は教卓にたつ教師の話に夢中になっていて、こんなにも近くにいる私には気付いてくれない。
「はい、じゃあ、絵の具取りに来てー。一人二色までだよー。」いろいろ考えているうちに授業はいつのまにか終わっていて、授業が終わってもシュウは藤倉のことばかり考えている。私にはそんなに魅力がないの?―――将来なにになりたいのって聞かれたけど、
「シュウのお嫁さんになりたい。」なんて口が裂けても言えなくて、大人になればなるほど、どんどん距離は離れて行って。大人…汚れてる、当たり障りのない関係、自分を犠牲にしてでも穏便に過ごすの?イヤ。オトナになんかなりたくない。それならずっと子供のままでいい。
「…千景、大丈夫?」優斗は優しい。私もこんな風に気を使えるようにならなくちゃいけないの?優しくすれば、想いは伝わるの?
★ひよりの藤倉日記★(対藤倉専用日記)
4月27日(月)
今日も藤倉先生の格好は、白いTシャツに普通のジーパンだった。
美術って勉強?
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