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[07.04/]
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の顧問現る

仕方なしに決まってしまった水泳部顧問ということで、さっそく部活をやるから来て欲しいと呼ばれてしまったのだった。プールは校舎の一番奥に位置しており、格技場の上にある。5月の新緑が揺れ、その木漏れ陽は眩しく、爽やかな日だった。
「・・・ふぅ。」職員室から一番遠い場所にあるなんて。行くのさえ億劫である。格技場を含むプールがある建物はコンクリート造りで、1階部分の吹き抜けに足を一歩踏み入れると、日陰のそこはひんやりとした空気だった。目の前にある鉄格子の扉の向こうにプールへの階段が続いている。結構な段数があり、踊場からさらに曲がってあがりきる。高さ的には本館4階建てよりも高い。
「先生、遅いです。」かすかに息を切らし、軽く立ちくらみのしている藤倉に容赦なく文句を言う。
「・・・すまん。こんなに遠いとは思わなかった。」
「じゃあ、部活はじめます。」藤倉を詰ったこの部活の副部長は、3年生で聡明そうだがややキツイ性格の持ち主だった。対照的に、部長はおっとりとニコニコしている。
「お・・・。」やっとシャワーの横を通り抜け、眼前に広がる光る水面に思わず目を奪われる。5月の柔らかではあるが照りつける日差しに、掃除されたばかりのプールに満ち足りている水が反射する。これなら、悪くないかもな・・・と考える藤倉だったが後悔は先に立たずと後に思い知るのだった。
「あ・・・、顧問、先生だったんですね。」どうやら俺が持つクラスの男子生徒のようだった。
「まあな。」今日は、陸トレだけだったみたいだが、来週からもうプールで泳ぐから毎日部活に来て欲しいとのことだった。
「え、だってまだ寒くないのか?」
「でも6月の大会に間に合わないですし、一応水温19度超えたら入ります。」タフな集団だな・・・。人数は8人と少ないが、前顧問の指導でしっかりと部活をし成績もそこそこ修めているらしい。
「先生は、そこの倉庫からイスかなんかひっぱりだしてきて、座って見れてばいいですから。」鉄格子の南京錠を閉め、鍵の当番である1年の生徒と本館に戻るのに、キュッ、キュッとシューズの音が響く体育館の横を歩いていた。
「藤倉先生は、なんで水泳部の顧問になったんですか?」俺に向けられた少年の顔は夕日色に染まり、その目はどこか輝いていた。
「水泳とかやってたんですか?あ、俺、実は泳げないんですけどね。」
「え、・・・いや、俺も泳げないし、たまたまってところかな。それより、泳げないのに水泳部入ったのか。」
「ああ、えーと、特にやりたいこともなかったし、優斗が一緒だったから・・・。」と、チラリと隣の髪の長い少年をのぞく。
「ふーん。ま、頑張れよ。じゃあ、気をつけてな。」ポンポンと頭をなでると、髪の長い少年の方が俺に針のような鋭い視線を向けてきた。ジャラジャラとたくさん鍵のついた木製プレートを下げ、俺は職員室に戻ったのだった。
「あれ、まだ津田先生居たんですか?」
「今日は部活があったので。」と書類などはキチンとファイルに収まり、片付いた机の上に簡易碁盤が開かれ、本を片手に白と黒の石並べに格闘している。
「何やってるんですか?」
「ちょっと、囲碁を覚えようと思って。将棋とチェスはできるんですけどね。」
「へぇ。俺は別に泳げるようになろうとは思いませんでしたけどね。あ、今のところ俺ならノビずにアテるかな。」なんて言ったら、真面目くさった顔で真剣に考え始めた。意外と面白い奴かもしれないな―。



続く。


追記(以下略):さてはてどうしたものか…続きができていないぞ(笑
水面から反射される日光は意外と強いので、日焼けするとイタイですね。ははは。
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