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ここから先は、純情ロマンチカという予備知識が必要な設定となっております。
知らない方は読んでも意味ぷぅなんで注意して下さいねw

なお、内容はオリジナルキャラクターの目線からの
オリジナルストーリーとなっております。
非エロなので未成年の方も安心して読んでね(死

文才は皆無なので、なんの話だか全然わからないよ?という状況に
陥っても悪しからず。





『君がおしえてくれたから』

第一章 もう何も失いたくない



忘れることができるのですか―――。
 
 
「じゃあ、今日の講義はここまで。レポート提出は2週間後、出さなかったら試験資格剝脱と思え。」今日も颯爽と上條助教授は教壇から去って行った。
「ううぅ~~どうしよう・・・最近の授業さっぱりわからない・・・。」と頭を抱えている。
「へーき、へーき、みんなわかんねぇつーの。」彼をよそに友達だちはさっさと教室から出て行ってしまった。気がつけば、3限の終わったこの時間、教室に残ったのは自分と目の前の彼だけだった。
「俺でよければ、勉強おしえよっか?」思い切って話しかけてみた。文学に興味があるなら別に手伝ってもいいと思っていた。
「え?ホントに?うっわ、すげー助かる!」晴れた笑みに、嫌みは全く感じられなかった。
「上條先生、4限に授業あるからそれまで勉強する?」
「うん、なに、上條先生のとこ行くの?」
「え、毎週行ってるけど?」
「へぇー・・・、俺は怖くていけないけど。」
「文学が好きだから。」それから談話室に行って、彼に授業の内容を教えてあげた。うーん・・・とうめき声をあげつつ、わかった!と時々声をあげて喜ぶ。なんだか可愛いやつだった。
 
 
「上條先生、本返しにきました。」
「ああ、そこに置いておいてくれ。で、どうだった?」
「面白かったです。特に第二章あたりが。とっても繊細な描写で、言い回しがなんともいえないですね。」
「そうだな、言葉も奇麗だしな。」論文を書いている途中みたいだったが、ふーん・・・とそっちのけで本のことを考えている。
「上條先生は、小説とか書かないんですか?」
「俺は読む方専門だからな。お前も書けたら持って来いよ。」お前も・・・?誰か持ってる人がいるのかな。
「はい、良いのが書けたら持ってきます。じゃあ、失礼します。」上條先生は、実はやさしい。授業ではあんな風だけど、文学に一人倍愛情を持っている。4年になったら、上條先生のゼミに入りたいと思っている。
 それからしばらくたって、無事レポート提出も終わり、勉強を教えた彼とは毎週、談話室にいた。
「そういえば、なんて呼べばいい?」
「俺、高橋美咲だから、美咲でいいよ。」
「わかった、俺は今井(まどか)。円でいいよ。」
「なんか、二人とも女みたいな名前だよね、ははは。」大学へ通いだしてからは、あまり人と付き合うこともなくいつも一人でいた。それが楽だったのかもしれない、久々にできた心の許せる友達だった。
 
「ふーん・・・家事とかしてるんだ。男なのにすごいね。」
「いや、円だって一人暮らしなんだから、そうだろ?」
「あはは、そうだね、俺もそうだった。」二人とも授業が後にないので、1週に1度、上條先生の授業のあとは一緒に帰っていた。青信号を渡っていると、向こうから信号無視しようとするスピードオーバーのバイクが近付いていた。
「危ない、美咲ッ!」
キュ―――――・・・ドンッと鈍い衝突音の後、目の前には空が広がっていた。咄嗟に、美咲だけを向こうへ突き飛ばし、自分の足は持っていかれてしまったらしい。足の感覚はなく、猛烈な痛みだけが体に残る。意識が朦朧とし、それからの記憶はない。
 
 
どこかでうっすらと自分を呼んでいる声がする。いっそこのまま死んでしまえたらどんなに楽だっただろう。
「―――まどか。気がついた・・・?」
「・・・ぅ・・うん。」
「良かった・・・!」ぎゅっと固く両手を握りしめ、目を潤ませていた。ああ、自分にもこんなに心配してくれる人がまだいたのかと思う。
「美咲は・・・けがしてない?」
「うん、俺は円のおかげでかすり傷ひとつないよ。それより、円が・・・。」
「それなら良かった。」もう大切な人は失いたくない。頭の奥が重く鈍くズキリと痛む。
「ごめん、俺のせいで・・・。俺が・・・」
「美咲のせいじゃないよ、別に俺が鈍くさかっただけだし。美咲が傷つくよりマシだよ。それより、そこにいる人は?」
「ああ、俺の付添。居候しているうちの大家さん。」後姿しか見えないが、結構な長身だ。
「・・・もしかして、ずっとここに居てくれたの?」もう窓から見える景色は暗い。
「当たり前じゃん。」
「付添の人に悪いし、もう帰りないよ。今日は、ずっと居てくれてありがとう。」
「ううん、じゃあ、明日もまた来るから。ゆっくり休んでね。」
 
「おい、いくらお前のことを救った恩人だから感謝はしているが、あれはお前のことを完璧に狙っているぞ。気をつけろ。見舞いに行くなら、俺も行く。」
「円をホモにすんな!失礼だろ!!ふざけんな!」
「・・・でもなんか違和感を感じるな・・・。」
「なんか言った?」赤いスポーツカーは闇夜を駆け抜けていった。
 
 
「おいしくない・・・。」怪我は、右足骨折、数か所の打撲、神経が数本切れていて、全治3か月。そのうち約2か月ほど入院を強いられることになった。思うように体も動かず、病院の飯はまずい。なによりもその間、大学の授業に出ることができない。
「まどか、見舞いにきたよ。けがの具合どう?」
「全治3か月で、骨折とかいろいろ。2か月は入院だってさ。」
「2か月も!?ど、どうしよう・・・。」
「お前が何で動揺するんだよ、それより頼みがあるんだけど。」
「なに?俺にできることならなんでも言って!」
「俺の家にノートパソコンがあるんだけど、それを持ってきてほしいんだけど。」
「うん、いつまでに持ってくればいい?あ、あと明日は俺来れないんだけど・・・」
「いいよ、でも3日後ぐらいまでには欲しいんだけど。」
「わかった。場所は帰り通るからわかるし。」
「かぎ渡しておくから、頼んだ。」大学にも連絡しておかないと・・・期末テスト受けられないかもな。上條先生の授業も出たいし、宮城教授の授業もある・・・。
 
美咲が帰ったあと、大学に連絡をいれた。幸い、携帯は壊れていなかったらしい。
「もしもし・・・今井ですが、上條先生いらっしゃいますか。」
「あ、俺だが、どうした?」
「いや、実は交通事故にあってしまいまして・・・2か月ほど入院するハメになってしまいました。」
「え・・・大丈夫か!?それは大変だな・・・これから期末だっていうのに。で、どこの病院なんだ?」
「近くの大学附属病院です。」
「近いうちに見舞いに行くよ。」
「あ、そんな先生忙しいのに、いいですよ。すごく嬉しいですけど、気持ちだけで十分です。」
「今時珍しく、お前は俺の授業熱心に聞いてくれてるしな。顔を出すくらいは時間はある。それに――・・・」
「それに、なんですか?」
「あ、いやっ、なんでもないんだ。気にしないでくれ。」いやに焦った様子だったが、自分を気遣ってくれるのは嬉しい。夕焼けにベットは赤く染まっていた。
 
 
それから1週間が経った。美咲が持ってきてくれたノートパソコンや、授業のノートなどで時間はつぶせていたが、本もないし、正直手持無沙汰になりつつあった。
「こんにちわー、お見舞いに来ましたよ先生。」
「相川さん!だから、先生って呼ばないでくださいって言ってるでしょ・・・。あ、もう原稿できたんで渡しておきますね。」手土産のお菓子とブーケのようなかわいらしい花束を持ってきてくれた。
「もうできたの!?助かるわー。今朝、宇佐美先生の原稿を印刷所に落としきたんだけど、今回も締切ぶっちぎり、デッド入稿もいいとこよ!ホント助かるわ。」
「でも、宇佐美先生の作品は素晴らしいですから。」
コンコンとノックの後、ガラリと扉が開いた。なぜか入院した日から個室で、そのことについては美咲から心配しなくていいといわれていた。回診の時間でもないんだけど、誰だろう?
「・・・!相川がなんでここにいるんだ?」そこには、あふれるほど詰め込まれた花束を持った超有名人が立っていた。
「宇佐美先生!先生こそ、なんでここに?」
「その子が美咲をかばってくれた子だ。今日はお見舞いにきた。」
「美咲の同居人・・・?」確かにあの日の後ろ姿は、目の前のこの人そのものだった。
「君にお礼と話がしたくてね。相川も疲れているだろうし、ちょっと席をはずしてくれないか。」話・・・?俺に?
「だれのせいで疲れてると思ってるんですか・・・!」
「・・・・・・。」宇佐美先生は微塵も動じない。
「そうですね、また来ます。じゃあ、お大事にして下さい。あ、原稿はそんな無理してあげなくていいですからね!」
「はい、ありがとうございます。」相川さんはフラつく足取りで病室から去って行った。点滴の一本でも打ってもらったほうがいいんじゃないかな・・・。
「君、作家なの?」
「・・・ええ、一応。去年デビューしたばかりの端くれですけど。」
「ふーん、新人で原稿を早くあげてくれる良い作家がいると、相川が言っていたのは君のことか。なに、BL小説?」一瞬ギクリとした。なんでそんなことまで知っている?相川さんが担当している作家さんは他にもいるはずだが・・・。
「・・・一般小説も出しています。」
「知っているよ。両方出していることもね。」だったら俺も聞きたいことがある。さっきからずっと気になっていた。
「宇佐美先生、秋川弥生ってペンネームでBL小説だしてるんじゃないんですか。」目を一瞬大きく見開いたが、特に動じることもなく、
「そうだよ。」やっぱり・・・こんなにうまく小説と現実がリンクするとは。
「男の作家さんって珍しいですね。」
「それはお互い様だろう。・・・!」目線を外し、棚の上の白い布を見て何かに気づいたような顔をした。
「なるほどね。君、なんでそんな恰好してるの?」
「なんで、そんなに俺に執着するんですか。」
「美咲が好きだから―――。」
扉がノックもなしにガラリと勢いよく開いた。
「美咲!」
「・・・おのれ、なにカミングアイトしてやがるんだ・・・!ここになにしにきた!!」赤いスポーツカーがあったのを見て不安になって駐車場から走ってきたらしい。
「見舞いだ。」
「うそつけ!なんでそんなこと話す必要があるんだよ!!」
「平気だ、彼女は小説のことまで知っている。」
「・・・は?彼女?円は男だぞ?・・・小説!?」バレていた、何がきっかけだったのか、いつから気づいていたのか。
「なんか引っかかっていたが、さっき俺もやっとわかった。彼女が作家だったのは予想外だったが。」といって、棚の上をさす。
「包帯じゃなくて、アレはさらしだ。あとそこに金色の長い髪が落ちてる。」
「・・・どういうこと、円?」ここまできたら、すべてを明かすしかなかった。
「黙っててごめん、だますつもりはなかった。」と黒髪のウィッグをひきはがすと、金色のウェーブした柔らかな長い髪が落ちてきた。手早くコンタクトを外すと、瞳の奥から青色をみせた。
「今井・フェリシカ・円。イギリス生まれ、もちろん女。母が日本人でイギリスでイギリス人の父と知り合って私を生んだ。だけど、母は新しい男とともに行方不明。私は生れてまもなく父とともに日本に来たわ。」
「フェリシカ・・・?女・・・?イギリス??」
「ちなみに、父はゲイで、私が小さい頃からママって呼ばされてる男の愛人が家にいるわ。私の描く小説は父のことよ。ボーイズラブなんて理解できなかった。でもこの年になってやっとパパの気持ちがわかるようになったから。」
「・・・ひっ。」美咲の顔からはみるみる血の気が引いていく。
「だから、秋川弥生先生の小説も知ってたし、さっき同居人って聞いた時にはおどろいたわ。まさかねってね、ふふふ。」
「バ・・・バレてるし。」
「ということで、私は美咲君には手を出すつもりは最初からなかったし、(男の恰好だったし)お二人のこと応援してますから。」
「ひいいいっ。」
「お前、良い友達を持ったな。」
「いやっ、でもなんで男の恰好なわけ?」
「それは今度ちゃんと話すよ。それより、美咲がホモだったとは知らなかった。」
「えええええ、あっ、いや、その・・・えっとー・・・。」
「ま、俺(宇佐美秋彦)限定だけどな。」
「ふ、ふざけんな!いいかげんにしろっ!」
「いいじゃない、素直になれば。私は別に気にしないから。」
「そーゆー問題じゃない!」笑い声が病院の一室に響いていた。



続く。(ぇ、つづくの!?



あとがき
私は大まじめですが、何か?(笑
なぜ、続くなのかというと、男装している理由まで行きつけなかったのと
過去の生い立ち(父親の話は別として)が全然語れてない!
さらに、エゴ・テロの絡みが全然ないではないか!!

どれぐらい物語がわかっていただけるか大変不安なので
よろしかったら、お暇なときに感想メールでも下さい(笑
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の生徒つぶやく

「久しぶりの授業だな。だるっ。じゃあ、この間のデッサン返すぞー。」あれから2週間、特別時間割やなんやかんやで、月曜の美術はつぶれ続けていた。
「お前らの能力はよぉーーーーーくわかった。なんか、このクラスには宇宙人とかいるみたいだけど大丈夫か?あと、デッサンの裏に一応評価いれといたから。」そ、それは俺の描いた持田のことでは…!?もしや、と思いデッサン裏のページをめくった。青いボールペンで
『もう少し、相手のことをよくみること。』と書いてあった。ちゃんと見て描いたハズなんだけど。
「持田はなんて書いてあった?」
「お、おしえない!!!」珍しく顔を赤くし、焦っている様子だった。
「優斗は?」と差し出されたスケッチブックを受け取ると
『お前、本気か?』ななななななな何を描いた?!ページをもどると…お前か――――――!!!!まさに宇宙人らしき“者”の姿が。
「俺はちゃんと、描いたんだけどなぁ。」わざとらしい落胆の色をみせるが、そんなことで許されるレベルじゃない。後ろの子が知らないことが不幸中の幸いだ。
「そーいえば、なんでお前ら勉強しに来きてるの?」一瞬の沈黙の後、
「さーてやるか。今日は色彩でもやろーっかな。」え。なにそれ。1つ前はスルー?でも、俺なんで勉強してるんだろう。普通に勉強して、普通に学校でて、普通に就職して、普通に結婚して…でなんなんだろう。授業が終わっても、藤倉の言葉が気になりぐるぐるぐるぐるスパイラルに陥っていた。
「…持田と優斗はなんで勉強してるの?将来何になりたいの?」
「はあ?ばっかじゃないの?そんなの普通に学校とか社会に出るため、自分のためよ。」
「俺は別に義務教育だからだけど。」
「じゃあ、どんな大人になりたいんだよ?」
「普通に好きな人を養って、幸せにできればいいかな?」
「さすが、優斗カッコイイなぁ…。」
「…オトナ。嫌な響きね。」と急に冷めた言葉をつぶやかれ、その言葉の意味はなんだったんだろうと思った。持田の見つめる先は遠い遠いどこかだった。
 
『相手のことを想っているのがよく伝わってきます。』見透かされたようで、すごく恥ずかしかった。
「…本人に伝わらなきゃ意味ないのに。」と小声で呟いてみるが、肝心の本人は教卓にたつ教師の話に夢中になっていて、こんなにも近くにいる私には気付いてくれない。
「はい、じゃあ、絵の具取りに来てー。一人二色までだよー。」いろいろ考えているうちに授業はいつのまにか終わっていて、授業が終わってもシュウは藤倉のことばかり考えている。私にはそんなに魅力がないの?―――将来なにになりたいのって聞かれたけど、
「シュウのお嫁さんになりたい。」なんて口が裂けても言えなくて、大人になればなるほど、どんどん距離は離れて行って。大人…汚れてる、当たり障りのない関係、自分を犠牲にしてでも穏便に過ごすの?イヤ。オトナになんかなりたくない。それならずっと子供のままでいい。
「…千景、大丈夫?」優斗は優しい。私もこんな風に気を使えるようにならなくちゃいけないの?優しくすれば、想いは伝わるの?
 
★ひよりの藤倉日記★(対藤倉専用日記)
427日(月)
今日も藤倉先生の格好は、白いTシャツに普通のジーパンだった。
美術って勉強?

の顧問現る

仕方なしに決まってしまった水泳部顧問ということで、さっそく部活をやるから来て欲しいと呼ばれてしまったのだった。プールは校舎の一番奥に位置しており、格技場の上にある。5月の新緑が揺れ、その木漏れ陽は眩しく、爽やかな日だった。
「・・・ふぅ。」職員室から一番遠い場所にあるなんて。行くのさえ億劫である。格技場を含むプールがある建物はコンクリート造りで、1階部分の吹き抜けに足を一歩踏み入れると、日陰のそこはひんやりとした空気だった。目の前にある鉄格子の扉の向こうにプールへの階段が続いている。結構な段数があり、踊場からさらに曲がってあがりきる。高さ的には本館4階建てよりも高い。
「先生、遅いです。」かすかに息を切らし、軽く立ちくらみのしている藤倉に容赦なく文句を言う。
「・・・すまん。こんなに遠いとは思わなかった。」
「じゃあ、部活はじめます。」藤倉を詰ったこの部活の副部長は、3年生で聡明そうだがややキツイ性格の持ち主だった。対照的に、部長はおっとりとニコニコしている。
「お・・・。」やっとシャワーの横を通り抜け、眼前に広がる光る水面に思わず目を奪われる。5月の柔らかではあるが照りつける日差しに、掃除されたばかりのプールに満ち足りている水が反射する。これなら、悪くないかもな・・・と考える藤倉だったが後悔は先に立たずと後に思い知るのだった。
「あ・・・、顧問、先生だったんですね。」どうやら俺が持つクラスの男子生徒のようだった。
「まあな。」今日は、陸トレだけだったみたいだが、来週からもうプールで泳ぐから毎日部活に来て欲しいとのことだった。
「え、だってまだ寒くないのか?」
「でも6月の大会に間に合わないですし、一応水温19度超えたら入ります。」タフな集団だな・・・。人数は8人と少ないが、前顧問の指導でしっかりと部活をし成績もそこそこ修めているらしい。
「先生は、そこの倉庫からイスかなんかひっぱりだしてきて、座って見れてばいいですから。」鉄格子の南京錠を閉め、鍵の当番である1年の生徒と本館に戻るのに、キュッ、キュッとシューズの音が響く体育館の横を歩いていた。
「藤倉先生は、なんで水泳部の顧問になったんですか?」俺に向けられた少年の顔は夕日色に染まり、その目はどこか輝いていた。
「水泳とかやってたんですか?あ、俺、実は泳げないんですけどね。」
「え、・・・いや、俺も泳げないし、たまたまってところかな。それより、泳げないのに水泳部入ったのか。」
「ああ、えーと、特にやりたいこともなかったし、優斗が一緒だったから・・・。」と、チラリと隣の髪の長い少年をのぞく。
「ふーん。ま、頑張れよ。じゃあ、気をつけてな。」ポンポンと頭をなでると、髪の長い少年の方が俺に針のような鋭い視線を向けてきた。ジャラジャラとたくさん鍵のついた木製プレートを下げ、俺は職員室に戻ったのだった。
「あれ、まだ津田先生居たんですか?」
「今日は部活があったので。」と書類などはキチンとファイルに収まり、片付いた机の上に簡易碁盤が開かれ、本を片手に白と黒の石並べに格闘している。
「何やってるんですか?」
「ちょっと、囲碁を覚えようと思って。将棋とチェスはできるんですけどね。」
「へぇ。俺は別に泳げるようになろうとは思いませんでしたけどね。あ、今のところ俺ならノビずにアテるかな。」なんて言ったら、真面目くさった顔で真剣に考え始めた。意外と面白い奴かもしれないな―。



続く。


追記(以下略):さてはてどうしたものか…続きができていないぞ(笑
水面から反射される日光は意外と強いので、日焼けするとイタイですね。ははは。

の教師描く

「おーい、授業始めるぞ。だまれ。」先週とは打って変わって、最初から喋らないことを要求してくる。あれは最初だけの脅しだったのか?
「なにしようかー・・・正直、俺は天才だから、お前らに何を教えていいか分からない。」言っている意味が、分からないんですけど。最初だから、デッサンとかやるのかと思ってたけど、俺は美術とか工作とか苦手だから正直、何もしてくれないと助かるのだ。
「芸術・・・美術の基礎、そう、基礎からだよな。」と何か一人納得している藤倉は、突然教室の後ろの美術準備室に消えた。
「おい、持田なにやるんだと思う?」
「さぁ?なんだろうね。シュウから話しかけてくるなんて珍しい。」と持田は質問内容より、俺の行動に感心しきっている。
「ねんどとか?」優斗の脳内は、俺には理解できない。
美術室の机の配置は独特で、横3列でたてに長く配列されている。大きさは教室の机の約2倍で、デッサン用に左4分の3ぐらいが持ち上がる仕掛けになっている。もともと黒色だったが、色とりどりの絵の具がついていて、古いものだから表面は彫刻刀などで彫った跡もありどれもボコボコだった。
「よっと。」藤倉がなにやら大きいダンボールを抱えて戻ってきた。黒板の前の長テーブルにそれを置くと中身を取り出し配り始めた。
「やっぱり、お前らの能力もわかんないし、最初はデッサンでいいよな。スケッチブックは、既に買ってあったみたいだし。」結局そうですか。淡い俺の期待は消えた。
「全員貰ったかー?デッサンを描く前に1つ話しておくか。」今日はなんの話なんだろう・・・と俺は内心美術のことよりも話の方が気になっていた。
「ピカソって知ってるか?」それぐらい、いくら美術に疎い俺でも知っている。あの目とか鼻とかがズレたわけのわかんない絵だろ?
「お前ら、ピカソの絵って目とか鼻とかズレた絵だけだと思ってないか?ピカソの作風はかなりコロコロと変わっていたんだが、有名になったのがその頃ってだけで、若い頃はお前らがうまいと思うような絵を描いていたんだ。」と二枚の絵を黒板に貼った。一枚は誰もが「ピカソ」と言われて想像するような女の人の顔のアップで顔のパーツはゆがみ、色もめちゃくちゃだ。もう一枚は、写真のような精密さをもつ薄暗い病室のような絵だった。
「これは、こっちが死ぬ直前ぐらいの歳で描いたもので、こっちは20歳の時にかいたものだ。」
「つまり、あんな絵を描いていても、基礎はきちんと出来ていたわけだ。」ちなみに、ピカソにはおじいさんになっても若い恋人が居ただとか、名前がやたら長いとかそんな話もしてくれた。
「じゃあ、デッサンはじめるか。隣の人の顔を描くこと。3列だから適当にうまくやってくれ。」って、俺は持田を描くのかよ・・・描いたら描いたで怒られること間違いなしだ。窓側から、俺、持田、優斗の順で座っているから仕方ない。
「今から鉛筆とカッター配るけど、鉛筆とか削れるよな?今どきは電動でガーッってか?」なんか、お前ら出来無そうだから・・・と黒板にチョークでさらさらと削り方を描いていく。無駄な線一本ない分かりやすい挿絵のような絵だった。
「じゃあ、はじめ。」それからしばらく、教室中楽しそうな声で包まれながら、それぞれ向かい合って互いの顔を描いた。
「あと、5分したら回収するぞー。」俺はじっとりと変な汗をかいていた。
「シュウ、見せてよ!もう、描けたんでしょ?」
「い、いや・・・無理!」持田はしつこく俺からスケッチブックをぶん取ろうとする。仕方なしにスケッチブックを渡すと、予想どおりの罵声を浴びせられた。
「ヒドっ。なにコレ。まず人間に見えないんですけど。」ひどいのはお前の言葉のほうだと思うが。
「じゃあ、持田のも見せろよ。」
「いや!恥ずかしいもん!!」なんだそれ。俺の方が何十倍も恥かしいっていうのに。スケッチブックの中身を後ろから見た優斗がクスクス笑っていたら、持田に思いっきりパンチを食らっていた。
「イタイ・・・・・・。」しょげた表情で頬をさすっている。やめておいたほうが賢明だと思った。
授業が終わった後、俺が最後に教室を出ようとしていたとき、藤倉は大きな掃除機で鉛筆のカスを掃除していた。その後姿はなんだか不思議な感じだった。
 
★ひよりの藤倉日記★(対藤倉専用日記)
413日(月)
今日も藤倉先生の格好は、白いTシャツに普通のジーパンだった。
藤倉先生は恋人とかいないと思う。



続く。


追記(以下省略):次までしか書けてねー!!!(汗
ひよりという生徒は今後登場するのか全くナゾです。それより私は安藤先生が(笑

の教師やられる

 それは、今年度一番最初の職員会議での事だった―――。
「それでは、今日は部活動の顧問の割り当てを決めます。場合によっては、二つ以上持っていただく場合もありますが、希望があったら申告して下さいね。じゃないとこちらで勝手に決めてしまいますよ。」
 ・・・・・・俺はすっかり忘れていた。
今日は、二回目の職員会議。もちろん、色々と話し合いや打ち合わせの話しもあったが、今日は顧問の割り当てが発表される。この学校には、美術部がないから俺はどこに配属されるのか全く不明。文化部はそこそこ数もあり、大体、教師の方も専門の人も多く充実しているので、まずないだろう。かといって、それなりにどこも強い運動部に俺が配属されるはずもないだろうし・・・変な部活じゃなきゃいいけど。と不安はつのるばかりだった。
「希望があった部活動は、ほぼ希望通りで決定された先生方には連絡済です。では、希望がなかった部活の顧問の配属を言います。囲碁・将棋部は津田先生、水泳部は藤倉先生、今年から新設のオーラルコミュニケーション部は桜井先生、体操部と放送部は今年から廃部となりました。以上です。」聞き間違いか?す・・・水泳部だと!?まだ、囲碁・将棋の方がマシだった。と希望を出さなかったことに激しく後悔したのだった。回転する事務イスで、右にくるりと体を向けた。
「津田先生、俺と変わってくださいよ、顧問。」と同僚に懇願してみたが、ヤツは今日も冷たかった。
「嫌ですね。俺は囲碁・将棋部でいいんで。」同情の気持ちさえ、微塵もないらしい。
「俺、泳げない。」
「知りません。」
俺と右隣の津田は、桜井春子が教育担当だ。新任教師の教育担当は二人に一人つく。主に、教科以外での生活指導や事務仕事・学校行事などを教わる。詰まるところ、俺と津田という組み合わせは、新任教師のドベとトップをくっつけたというような取り合わせだった。俺が何を隣でしようが、話しかけようがしらっと、涼しい顔で流される。短く切りそろえられた少し色素の薄い細い髪は繊細で、シワ一つないスーツをキチンと毎日着てくる。容姿も悪くはないが、この上なく面白味のない男だとは思うが、席が隣なので、暇つぶしに俺は、毎日声をかけているのだった。
「でさ、」
「嫌です。」
「ちぇ」



続く。



追記(別名、著者の戯言):今回は全く持って、私もよくわからないオチ&話になってしまいました。大体、なんで美術部ねーんだよ。もともと水泳部の顧問にしたかったのですが、それは私が水泳部だったからというだけです。国語の先生を早くつくりたいなぁ。
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